カテゴリー: 雑記

“転職回数”という数値が、労働者の正当な選択を否定する社会

――なぜ法を破った企業より、辞めた労働者が不利になるのか

 転職が当たり前になりつつある世の中。

 その一方で、転職を重ねれば重ねるほど、転職難易度が上がるという事実があります。特に20代といった若い世代に顕著な傾向です。


 それは、転職市場では転職回数が多い労働者を「忍耐力がない」「飽き性」など、本人に問題があるように見る企業が多いからです。しかし、必ずしも全ての転職者が「つまらないから辞めた」という理由で転職を重ねているわけではないと思います。


 もし、「企業が法律を守っていない」ことが転職理由であるとしたらどうでしょうか。


 これは、比較的小さな法令違反をしている企業に多い問題だと思います。
 たとえば、始業時間前に事務所の掃除を無給で行うことや、残業を数分単位(5分や15分など)でカウントし、それに満たない時間は切り捨てて残業代を計算することなどが挙げられます。
 前者は、掃除が使用者の指揮命令下で行われている場合は「労働時間」に該当するため給与の支払いが必要ですし、後者は、残業代は原則として1分単位で計算して支払う必要があるため、法律に違反していることになります。


 こんな些細なことを気にしてどうするんだ、そんなことをする企業や経営者はごまんと存在すると言われれば確かにそうなのかもしれません。しかし、世の中にはそのような些細な違反であっても、労働意欲を削がれてしまう人がいるのも事実なのです。

 労働者と使用者という枠に囚われない、人と人との関係性を定める民法第1条2項では、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」としています。
 この世の中で、自分は嘘をつくけど相手には誠実でいてほしいというような人と親密な関係になりたいと思う人はどれくらいいるでしょうか。


 労働者は毎日定刻通りに出勤して、定められた労働時間分労働し、ときには会社のために自身のプライベートな時間を削ってまで残業をする。それなのに会社のほうは労働者の働きによって利益を上げているにもかかわらず、正当な対価である残業代を支払わない。支払ったとしても、管理の効率化という名目で経営者にとって都合のいいように勤怠システムを小細工し、1日ごとに切り捨てられた残業時間は闇に葬られる…。こんなアンフェアな事実がまかり通っているのが現代の日本社会なのです。

 こうした状況は、ここ10年ほどでだいぶ改善されてきたように思います。紙面を賑わすような大きな違反をする会社は減ってきました。一方で、軽微だけれど確実に法律違反をしているアウトな企業はまだまだ数多く存在する状況です。


 今では、残業代不払いは法律違反であることを知らない労働者がいることがむしろ珍しいくらい、労働基準法を認知する労働者が増えた世の中で、たとえば自身の転職先の企業が法律違反をしていたとしましょう。労働者は入社してすぐに、法律違反の事実に気が付くはずです。そして最初は我慢していても、次第に不満が溜まっていき、ある時にとうとう辞めたいという気持ちに至ってしまいます。
 しかしながら、もし企業の法律違反が原因で辞めたとしても、解雇やハラスメント等という事実がなければ、いわゆる一身上の都合、自己都合退職になってしまうのです。


 日本の転職市場は、退職理由にかかわらず、転職回数が多い労働者を良しとはしません。これまでに3回転職経験があったとして、そのうち2回が上記のような理由で労働者側に落ち度がないとしても、です。
 この風潮は、労働者側にとってとても不公平に思えます。なぜ、違反をする企業はのうのうと経営を続け、対し労働者は転職が難しくなってしまうのでしょう。
 とても生きづらい世の中に思います。

 以前、どなたかのブログで、転職や退職した労働者が企業を評価する公的システムがあればいいのに、といった一節を目にしましたが、私はその考えに賛同いたします。現状、法律違反をした企業への罰則がそこまで厳しくない日本において、労働者の権利がより守られるようになるには、別の形で企業に働きかけていくしかないと思うからです。
これについて、あなたはどのように思いますか。

 以上、近頃感じていることを書き綴ってみました。転職回数の多い方にはなかなか厳しい世の中ですけど、自身の信念や思いを大切に、進んでいきましょう!


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作成者:

モモンガ日記編集者。 担当は、法律、政治、経済、その他

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