カテゴリー: 一般向け数学・統計学

無限個の足し算とその利用(信用創造)

こんにちは。今回は、無限個の数を足すとはどういうことか?を説明したいと思います。

足し算の不思議

112+1314+1516+
という風に、1,12,13,を交互に足したり引いたりしていくとどうなるかを考えてみましょう。
S=112+1314+1516+
とすると、
12S=1214+1618+110112+
となるので、これらを足してみると、

S=112+1314+1516+1718+19110+111112++)12S=       12        14         +16        18        +110          112+32S=1        +1312+15         +1714+19          +11116 +
足した結果、+のところだけを見ると、1+13+15+となっていて、のところだけを見ると、121416となっていますので、32Sは最初のSと同じものを足しています。つまり、
32S=S    3S=2S    S=0
ということがわかります。しかし、
S=(112)+(1314)+(1516)+=12+112+130+
と考えると、S=0というのはおかしいように見えます。なぜこのようなことになってしまったんでしょうか…?

無限和の定義

そもそも人生は有限なので、どんなに計算が速くても無限に数を足し続けることはできません。つまり、無限に数を足したらどうなるか?は神様しかわからないのです。じゃあどうすればいいんだ?ということですが、数学では無限個の足し算を次のように考えます。

無限和の定義
S=a1+a2+a3+
という足し算に対し、n番目までの和
Sn=a1+a2+a3++an
を求めてみる。nをどんどん大きくしていけば、このSnはだんだんと本来の値Sに近づいてゆくはずである。そこで、
S=limnSn
と定める。

このlimnSnは「nをどんどん大きくした行った時の、Snの近づく値」です。つまり。「100番目までの和」「1000番目までの和」…をどんどん求めていって、どういう値に使づくのかを調べなさい、ということです。

簡単な例として、
S=11×2+12×3+13×4+14×5+
という足し算を考えてみます。この場合、n番目までの和Snなら簡単に求めることができます。実際、

11×2=112,  12×3=1213,  13×4=1314,
という変形により(右辺を通分してみてください)、
Sn=11×2+12×3+13×4++1n×(n+1)=(112)+(1213)+(1314)++(1n1n+1)=11n+1
と計算できます(最初と最後以外+で打ち消しあいます!)。
この式でnをどんどん大きくしていくと、1n+1の部分は、110(=0.1),1100(=0.01),11000(=0.001)という風にどんどん0に近づいていくので、Snは1に使づいていきます。つまり、最初の式はS=1と求まるわけです。

さて、数列の無限和において重要なことは、「足す順番を変えたら答えが変わるかもしれない!」ということです。これは普通の足し算ではありえないことですね。例えば、

S=11+11+11+11+

という和を考えてみましょう。これを、

S=(11)+(11)+(11)+(11)+=0+0+0+0+

という順番で足すと、もちろん「n番目までの和」は常に0ですね。一方、

S=1+{(1)+1}+{(1)+1}+{(1)+1}+=1+0+0+0+

という順番で足すと、「n番目までの和」は常に1です。つまり、足す順番を変えると「n番目までの和」が変わってしまうので、最終的な答えも変わってしまうということです。最初の例でおかしなことが起こったのも、何も考えずに足す順番を変えてしまっていたことが問題だったわけです。

等比数列の和

数列の無限和の中でも、
S=1+0.9+0.92+0.93+
のように、1からスタートして0.9をどんどんかけていった数を足したものがよく出てきます。上のSを先ほどの定義に従って求めてみましょう。まずn番目までの和は、

0.9Sn=1+0.9+0.92+0.93++0.9n+1  
です。これに0.9をかけると、
0.9Sn=0.9+0.92+0.93+0.94++0.9n+1  
を考えると、
Sn=1+0.9+0.92+0.93++0.9n)0.9Sn=       0.9+0.92+0.93++0.9n+0.9n+1(10.9)Sn=1                                                       0.9n+1
よって、n番目までの和は、
Sn=10.9n+110.9
と求まります。nを大きくすると、0.9n+1の部分はどんどん0.9をかけていくということなので、だんだん小さくなり0に近づいてゆきます。つまり、
S=110.9=10.1=10
となります。今の0.9の部分をrに変えると、次の公式が作れます。

公式
1<r<1とすると、
1+r+r2+r3+=11r

信用創造

支払準備率が10%の場合

上の公式は、数学だけでなく経済学などでも活躍します。一例として、信用創造というものを説明しましょう。銀行では、預金のうち一定の割合を日本銀行に預ける必要があります。この割合を、預金準備率といいます。例えば、預金準備率が10%であれば、預金の10%を日本銀行に預け、残りの90%を別な銀行などに貸し出すことになります。

例えば、銀行Aに100万円の預金があったとすると、その10%にあたる10万円が日本銀行に預けられ、残りの90万円が他の銀行Bに貸し出されたりします。この時点で、銀行Aと銀行Bの預金額の合計は100万円+90万円=190万円で、最初の100万円よりもおおくなっています。このようにして預金残高を生み出す仕組みを信用創造といいます。
さらに、銀行Bもこの90万円をほかの銀行Cに貸し出すことによって、預金の合計はどんどん増えていきます。

信用創造

この時すべての銀行の預金残高の合計は、さっきの計算
1+0.9+0.92+0.93+=10
を思い出すと、

100+100×0.9+100×0.92+100×0.93+=100×(1+0.9+0.92+0.93+)=100×10=1000
つまり、信用創造によって100万円のお金が1000万円になったということです。同じように、預金準備率がrの時は(今の例ならr=0.1)、さっきの0.9の部分が1rになるので、信用創造によって生み出されるお金は、先ほどの公式により、
()×{1+(1r)+(1r)2+(1r)3+}=()×11(1r)=()×1r
つまり、元の金額を預金準備率で割れば、信用創造によって生み出される金額がわかるというわけです。

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作成者:

数学科の学生で、確率論、統計学を専攻しています。

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