皆さんこんにちは!
本日は、選挙制度の種類について紹介していきたいと思います。
選挙制度は、ざっくり2つに分類することができます。多数代表制、比例代表制です。以下では、それぞれ詳しく説明していきます。
選挙の機能
とその前に、まずは選挙の2つの機能について説明します。
1つは、自分の利害を代表してくれる議員を議会に送る民意表出機能、
もう1つは、有権者の意見を集約することで、国家の目標を定義して国民をその方向へと導くリーダー(大統領や首相など)を選ぶ民意集約機能というものです。
→民意表出機能を実現するには、多くの候補者・政党の存在が必要です。これに重点を置いた選挙制度が、比例代表制です。
→民意集約機能を実現するには、選択肢がなるべく少ないほうが望ましいです。これに重点を置いた選挙制度が、多数代表制、とりわけ、単純小選挙区制です。
それでは、ようやく本題に入っていきます。
多数代表制
多数代表制とは、獲得票数の多い順に当選者を決めるというものです。
他の候補者より多く票を集めた者が当選することにより、国民の多数派の意見を議会に反映させようとする選挙制度です。
【代表例】
・単純小選挙区制
→選挙区から選出される議員数は1人であり、1人1票の投票で相対的に1位になった候補者を当選させる単純小選挙区制がこの選挙制度の代表例といえます。…(※)
(※)選挙区
:選挙において代議員を選出する単位として,有権者を一定の基準で区分したもの。
小選挙区、大選挙区、中選挙区がある。
*日本の小選挙区制はイギリスをお手本にしています。余力があればぜひ、英国単純小選挙区制が変わらぬ理由という記事を読んでみてください。
♠プラスα知識♠
単純小選挙区制の利点
→各選挙区から相対的に1位となった議員を1人選出するため、有権者にとっては責任の所在が明確になります。政策について不満があれば、次の選挙で代わりの議員を選べば良いことになります。
単純小選挙区制の難点
①死票の多さ
②戦略投票を促す
①について
→たった1人しか当選しないので、仮に落選者に過半数の票が集まったとしても、たった1票の違いでそうした票が無駄(死票といいます)になってしまいます。
これは、有権者が自分の選好に正直になって、投票用紙に候補者の名前を書くという、誠実投票の場合です。
一方で、戦略投票…(※)という方法も投票の仕方としてあるのですが、単純小選挙区制は、②戦略投票を促してしまう側面があります。
→下の図を見てみましょう。(候補者名、支持率は全てフィクションです)
・「ちょっと左派」の有権者は、候補者である岸の当選する可能性が低いことを事前に知れば、岸よりは当選する可能性が高い、且つ、自分のイデオロギーに近い候補者である伊藤に投票するかもしれません。
このようにもし、岸の支持者が全員戦略的に投票先を変えれば、伊藤は58%(33+25)の票を獲得して当選することができます。
・佐藤や田中についても同じことが言えます。
(※)戦略投票(戦略的投票行動)
:自分の立場に最も近い政党・候補者の当選の確率が低い場合、次善の政党・候補者に投票すること。
→こうした戦略投票は、有権者が自分の選好に誠実になって投票しているわけではないので、選挙に民意表出機能を求める観点からすれば問題であると言えましょう。しかしながら、選択肢を絞って有権者に選択を迫るという、民意集約機能を重視する立場からすれば、むしろ望ましいとも言うことができます。
〈まとめ〉
単純小選挙区制は、制度が与えるインセンティブによって選択肢を2つに絞り込み、民意を集約することに重点を置いた選挙制度といえる。
→嚙み砕いて言うと…
1人しか当選しないという制度的に、「〇〇v.s.△△」みたいな2者対立構造になりやすいので、争点が明確になる!ということです。
比例代表制
比例代表制とは、政党が獲得した得票に比例して議席を配分しようとする選挙制度です。なので、有権者の選好が反映されやすく、選挙の機能のうち、民意表出機能に重点を置いた制度であると言うことができます。
比例代表制では、政党が、事前に候補者リストを作成しておき、各政党の獲得議席に基づき、そのリストから当選者を決めていきます。←これ重要です
*選挙に行ったことがある人なら分かると思いますが、比例代表制では投票用紙に「政党の名前」を記入します。一方小選挙区制では、用紙に「候補者の名前」を記入します。
ここからはちょっと難しい用語が出てくるのですが、その用語とそれが持つ働きについてよくよく理解していきましょう!
比例代表制は、①拘束名簿式比例代表制と、②非拘束名簿式比例代表制、に分類することができます。
拘束名簿式とは、政党が提出する候補者リストの順位が、政党によって、あらかじめ決められている、という方式のことです。
なので、①と②の違いは、順位があらかじめ決められているか決められていないか(=候補者が政党によって拘束されているかされていないか)という違いだけなのです。
さて、①の拘束名簿式ですと、候補者にとってはリスト内の自分の順位が高ければ高いほど、その分当選する可能性が高くなるので、候補者は下手に政党執行部(政党をとりまとめるリーダーたち。彼らがリストを作る)に歯向かって自らの順位を下げるような行為をしなくなります。
→拘束名簿式は、党首や幹事長といった政党執行部の求心力(≒権威)を高める働きをもつといえます。(「政党の利益のために!」が強くなるといえますね)
一方で②の非拘束名簿式ですと、候補者リスト内の得票数の高い順から、割り振られた当選議席数の分だけ当選者が決まっていきます。
利点は、有権者が自分の選好に基づいて候補者を選べるということです。ただし、候補者からしてみればリスト内の順位、つまり自分が当選して議員になれるかどうかは自分への得票次第であるため、同じ政党内で候補者同士が得票を競いあうことになるという難点もあります。
→非拘束名簿式だと、各候補者は政党全体の利益よりも自分の支持者の利益を優先するインセンティブを、拘束名簿式より強くもつことになります。
まとめ
今回は、選挙制度について説明してきました。選挙制度はざっくり分けると、多数代表制と比例代表制の2つということになりますが、もちろん、この2つをミックスした制度(小選挙区比例代表並立制など)もあります。
復習ポイントは、
・選挙には2つの機能があるということ、
・そして多数代表制(単純小選挙区制)と比例代表制という2つの制度があり、それぞれ選挙のどの機能を重視したものであるのか、ということをよく理解しておきましょう!
さらに、比例代表制の種類についても理解できたら、今の日本の選挙システムの問題点や改善点についても考察していけると思います。
次回は、日本の選挙制度とその変遷について紹介していきたいと思います。
それでは良い一日を!