カテゴリー: 政治学雑記

ゲーム理論の入門の入門~考え方や用語の解説~ 

皆さん、こんにちは!
今回はゲーム理論を紹介していきたいと思います。
入門の入門ということで、ゲーム理論の基本的お約束事項(=考え方)を説明します。

ゲーム理論ってなんだろう

ゲーム理論とは、経済や社会における複数の行動主体(アクター)の意思決定と行動を研究する学問です。
この学問は20世紀半ばに、数学者であるフォン・ノイマンさんと経済学者のモルゲンシュテルンさんが共著『ゲーム理論と経済行動』を出版したことにより、創設されました。(そして2人の研究論文は、なんと1200ページもあったということです….)
そして『ゲーム理論と経済行動』が出版された後、ゲーム理論はプリンストン大学の若い数学者を中心に研究が続けられました。その中にいたナッシュさんが、ゲーム理論をさらに新しい方向へと発展させ、今日のかたちとなっているのです。

♠豆知識♠
ノイマンさんは、20世紀の科学の発展に多大なる貢献をした偉大な数学者として有名です。また、現在私たちが使っているコンピュータの基礎理論をつくった人でもあります。

ゲーム理論の考え方

ゲーム理論の考え方、つまり分析の視点には2つあります。
・「いかに行動すべき?いかに行動するのが合理的なんだろうか?」
 →という問いを考える、規範的理論
・「実際に人々はどう行動するのだろうか?」
 →という問いを考える、記述的理論

分析の視点としては2つに区別されていますが、両者は密接に関わりあっています。
たとえば、私たちが合理的な行動(「いかに行動すべき?」)を理論化しようとするとき、実際の人々の予想される行動(「実際に人々はどう行動するんだろう?」)が、その理論を正当化する重要な判断材料となります。反対に、私たちが実際に行動するとき、合理的な行動のモデルにもとづいて行動することが多いです。
このように、規範的理論、記述的理論は、どちらかがより重要なんだ!というのではなくて、両者とも等しく重要な分析視点といえましょう。

ゲーム理論の対象

ゲーム理論の研究対象は、ゲーム的状況(戦略的状況ともいいます)です。
ゲーム的状況というのは、社会や経済でみられる、複数の行動主体(人や会社など)の相互依存状況のことをいいます。
「相互依存状況」というとイメージが湧きにくいですが、そもそも、生きているかぎり私たちの行動は相互に影響を及ぼし合いますね。友達や家族、恋人といった人との出会いから、コンビニで物を買うという行為まで、私たちはつねに何らかの意思(動機)によって自分の行動を決定するわけです。

たとえば、企業についてはどうでしょうか。
企業の利益は、どのような製品を開発しようか、などといった経営戦略に大きく依存しますが、それだけでは決まりません。他の企業の経営戦略や消費者の「何を買おうかな~」という需要動向にも大きく影響を受けるのです。
→なので、企業は経営戦略を決定する際は、他の行動主体の戦略や動向を十分に考慮する必要があります。
このことは他の企業についてもあてはまることから、企業の行動は互いに影響を及ぼし合うという、相互依存関係にあるのです。

このように、ゲーム理論の対象はあらゆるゲーム的状況です。自分の利得が自分の行動の他、他者の行動にも依存するというゲーム的状況は、経済の領域によくみられるので、ゲーム理論は経済学で中心的役割を担ってきました。しかし、ゲーム的状況というのは、経済以外にも政治や社会領域など様々な分野でみられるため、近年は経済学以外にも経営学や政治学、法学、社会学などの社会科学系や、心理学、哲学などの人文科学系、さらには生物学や物理学、工学、コンピュータ科学などの分野でもゲーム理論は応用されています。

ゲーム理論における人間のモデル

ゲーム理論では、次のような人間像を前提にしています。
合理的な人間
理性的な人間

 ①の合理的とは、ただ自分の利益のみを第一と考えて行動することのみを、合理的というわけではありません。確かに、利己的な動機は人間の行動の背景にあるのは事実です。ただ、最近の研究により、人間の行動は、利己的以外にも、公平性や互恵性(相手に良くしてもらったらこちらもそのお返しをする)によっても決定されるということが分かってきました。
人間は、(内容はどうであれ)一定のインセンティブ(動機)にもとづいて行動するはずであり、このことを合理的であるといいます。

 ②の理性的とは、人間は、「もし自分が相手の立場だったらこうするだろう」というように、相手の立場に立ってものごとを考えることのできる想像力と洞察力をもつはずだ、という意味合いです。人間がもつこのような能力は、「いかに他人を負かそうか」という戦略の読み合いを可能にするだけでなく、「相手とうまくやっていこう」という、利害の対立を回避して相手と協力することも可能にします。また理性は、相手の気持ちを理解して共感するという、人間の道徳的な感情の基盤ともなります。

ゲーム理論は、合理的で理性的な人間の行動原理を発見し、その一般的な特性を明らかにしようとします。
もちろん、現実の人間は間違いをしますし、ときに感情的なることもしばしばあるわけですが、人間は多かれ少なかれ合理的に行動しますし、そのように努力もします。このことが、現実の人間に対して「合理的な人間」という比較的単純なモデルを構築することを可能にし、そのモデルを現実の人間に非常によく似た存在であるとして用いることを可能にするのです。

基本用語

ここでは、ゲーム理論で使う基本的な用語を紹介します。
・プレーヤー:ゲームで意思決定し行動する最小単位
・提携:2人以上のプレーヤーが協力を目的として形成する集団
・戦略:プレーヤーがゲームをプレーするために立案する行動計画
・手番(てばん):ゲームにおいてプレーヤーが行動を選択する局面。自分の番。
・履歴:ゲームの始まりから1つの手番までに選択された行動の系列
・結果:ゲームが終了するときに定まるもの
・選好:プレーヤーがもつ、ある対象に対する好み
・選好順序:プレーヤー自身にとっての好み・望ましさの順序(プレーヤーはこれに基づいて結果を評価)
・効用/利得:プレーヤーの選好順序を数値化したもの
・ゲームの解:プレーヤーがどう行動すべきか指示する指針。行動原理。ゲームの最終的に落ち着いた状態。
→解においては、プレーヤーが他の行動をとろうとするインセンティブ(動機、行動理由)がなくなると考えられるので、安定状態になります。

ゲームの種類
・ゼロ和ゲーム:(2人の)プレーヤーの目的が完全に対立するゲーム
・非ゼロ和ゲーム:ゼロ和ゲームでないもの
→囲碁や将棋、スポーツのように勝ち負けを競うのがゼロ和(2人)ゲームです。「ゼロ和」の由来は、プレーヤーの利得の和がゼロであることからきています。
→非ゼロ和ゲームでは、プレーヤーの利害は完全に対立することはなく、利害の対立と協力の可能性が混在します。社会や経済のゲーム的状況の多くがこちらです(協力ゲームもこれです)。

・情報完備ゲーム:ゲームのルールをゲームに参加する全てのプレーヤーが完全に知っていて、ゲームのルールが全てのプレーヤーの共有知識であるゲーム
・情報不完備ゲーム:情報完備ゲームでないもの
→囲碁や将棋、スポーツは、競技者がゲームのルールを完全に知っているので情報完備ゲームです。
→一方、現実の社会や経済の多くのゲーム的状況は、情報不完備ゲームとなります。企業は、ライバル企業の製品開発について不完全にしか知らないことが多いですよね。(もし完全に知っていたなら、その企業の中にはスパイがいるということで大問題ですよ…)

ゲーム的状況
:複数の主体がそれぞれの意思決定によって影響を受ける状況のこと。
「相手はどう行動するかな?」「それに対して自分はどう行動したらいいのかな?」と決断に迫られるシーン(=状況)のこと。

最後に

今回は、ゲーム理論の概要や考え方、基本用語を紹介しました。
参考にさせていただいた著作物は、岡田章さんの『ゲーム理論・入門 人間社会の理解のために』(有斐閣アルマ、2014年)です。(今回は参考文献を表記しましたが、他の記事については、今後まとめて文献リストをアップしていきたいと考えています!)

それでは良い一日を! Have a nice day!

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作成者:

モモンガ日記編集者。 担当は、法律、政治、経済、その他

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