カテゴリー: 雑記

『Cowspiracy』を観た感想

 昨日『Cowspiracy サステイナビリティの秘密』(2014)というドキュメンタリー映画を観た。1時間30分と、大学の1つの講義と同じくらいの長さなので、勉強がてらに気軽に観ることができるだろう。

 この映画を観た感想は、ズバリ目から鱗が落ちるようだった。
 
 私たちが普段、環境問題の原因は何かと思い浮かべたときに、真っ先に浮かぶのが、車の排気ガスや火力発電、運輸に使われるガスなど石炭や石油、天然ガスを燃焼した際に排出される二酸化炭素が主だろう。実際それは正しく、IPCC第5次評価報告書によれば、2010年時点の温室効果ガス総排出量に占めるガスの種類別の割合をみてみると、二酸化炭素が65.2%、次いでメタンガスが15.8%となっている(この投稿では感想を述べたいので、具体的な数値はこれだけに留めておく。細かく知りたい人はぜひ映画を観てみてほしい)。

 そしてこの映画では、具体的な数字を示しつつ、メタンガス排出の主原因が畜産業によるものであると結論付けている。
 各国の政府は地球温暖化の進行を食い止めようと、私たち市民に対して、プラスチック製品の使用を減らすよう促したり、節電を求めたり、自家用車ではなくなるべく公共交通機関を利用するよう言ったりと市民一人ひとりの心がけによって状況がよくなると声高に宣言してきた。このドキュメンタリー映画を制作した人も政府の教えを忠実に守ってきた一人であったが、あるとき彼はふと疑問に思う。これだけ徹底して環境に負担を与えないよう気をつけて生活しているのに、世界の状況は悪化する一方であると。それはなぜか。他にも原因があるのではないかと考えたときに、畜産業が環境に与える悪影響のほうが程度が甚だしいではないかという点に気が付いたのであった。
 
 このことについては映画を鑑賞した人々のなかにも賛否両論ある。私個人としては、畜産業という思わぬところにも原因があるということを知ることができて良かったと思っているが、依然、温室効果ガスのほとんどが二酸化炭素であることから、今まで通り脱プラや節電、ごみの減量などをしつつ、メタンガス排出削減にも寄与するために食生活の見直しを図っていこうと思っている。

 さて話を映画に戻すと、畜産業界はどうやら環境破壊に多大なる影響を及ぼしているらしい。メタンガス排出はもちろんのこと、牛を放牧する場所を確保するために、いわゆる誰のものでもない自然環境、見方を変えればみんなの(公共の)空間を、牛が天敵に襲われることがないようにという一つの私企業の利益のために、その環境下で生息していたコヨーテや狼などを一匹残らず銃殺して、破壊しているのだ。
 また、自然環境の破壊は、牛の放牧の場所確保のためだけではない。牛ほか畜産動物の餌を生産する農場確保のためにも行われている。その最たる例が、アマゾンの森林伐採だ。私たちが思い浮かべる熱帯雨林の伐採は、私たち先進国の人々の食事を快適にするために、パーム油の原料となるアブラヤシのプランテーションを行うためであるとするものであろう。それらは主に東南アジアで行われているものだ。もちろんそれも問題であるが、畜産用の飼料を作る農場は、アブラヤシの農場よりはるかに広大な面積を必要とする。アマゾンの熱帯雨林は世界最大であり、そこが私たちが食べるお肉のために消失しようとしている…。
(うちは国産の肉を食べているから問題ない!という人もいらっしゃることと思うが、日本の多くの畜産農家は飼料を安いという理由で海外から輸入している。)

 ただでさえ衝撃的な内容であるが、畜産業が及ぼす環境破壊は地上だけにはとどまらない。影響は海洋にも及ぶ。畜産業では、一つの牧場で大量の牛を管理している(日本では1つの酪農家で平均93頭飼育している。戦後は平均2頭で、酪農家数が40万戸、現在は1.4万戸となっているから、大規模集約化していることがわかる)ことから、大量の牛の糞尿が河川そして近海へ流れ込み、海水が酸化して、付近の魚が死滅、魚の捕れない地域が増えている。
 海洋環境悪化と関連して、映画内では、畜産業だけでなく漁業の在り方についても問題提起している。乱獲が相次ぎ、魚の自然増加数<捕獲数となり絶対数が減少していること、目的の魚を獲るためにその5倍の数の他の魚類が網にかかって死んでしまうことなど、海洋問題といえば海水温の上昇によりサンゴの白化現象などが注目されるが、この映画は、私たちの食生活そのものが海洋環境に負荷を与えているのだということを気づかせてくれる。
 
 スーパーに行くと大量に並べられている肉、魚。それも毎日。生鮮食品は消費期限の短いものが多く、売れ残ったものは全て廃棄され(もしかしたら裏でお惣菜として調理されているのかも…。いずれにしろ食品業界については知らないのだが、どうかそうあってほしい)、翌日には新しい商品が並べられる。
 この現状を維持するために、裏でどんなことが行われているのか。誰がどんなコストを支払っているのか。そして誰が一番利益を得ているのだろうか。こうした疑問をこの映画は問いかけ、そして答えを導き出す。無論、この映画は制作者の考え方や価値観がはっきりしているので(悪くいえばバイアスがかかっている)、たとえば畜産業界の苦悩や政府の思惑などを知って多角的に状況を判断したいと考えている人にとっては、少し物足りないことだろう。それでも、環境問題に畜産業が影響を及ぼしている側面を全く知らなかった人にとって、この映画を観て制作者の考え方を知ることは、それに対して自分はどう思うのかという問題意識・価値観の形成に非常に役に立つといえる。

 最後に、私がこの映画を観て一番に印象に残り、誰かに伝えたいなと思ったことは、「ハンバーガー1個に使われる水の量はシャワー2か月分」という部分である。お、恐ろしい……!!

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作成者:

モモンガ日記編集者。 担当は、法律、政治、経済、その他

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