18歳になるって、どういうことだと思いますか?
「いやいや、生きていれば当たり前に18歳になるでしょ!」とか、「18歳になっても何にも変わった気がしない」とか、「高校3年か~進路どうしようかな」などと思うでしょうか?
そういう私も、18歳になったときは同じように思っていました。実は、18歳になった当時書いた日記があるので、機会があったら公開しますね。ぜひ読んでみてください(笑)
実生活では、18歳になってもたいして変化を感じられないと思います。しかし、法律上は、18歳になった・なっていないで大きな違いがあるんです。
成年(成人)の年齢を定めているのは、民法という法律です。
(現行民法)第四条 年齢二十歳をもって、成年とする。
→(改正民法)第四条 年齢十八歳をもって、成年とする。
実は、今までは成年年齢は20歳だったのですが、平成30年に改正された結果、18歳へ引き下げられることになったのです。
Why?→「どうして民法の成年年齢を18歳に引き下げるのですか?」(法務省HP)http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00238.html
ちなみに、改正民法が施行される(=法としての効果を発揮する)のは、2022年からなので、今はまだ成人年齢が20歳ですが、皆さんには「市民」としての自覚をもっていただきたいので、早めにお伝えしますね!
未成年者=「制限行為能力者」のこと
はい、いきなり難しい言葉が出てきてしまいましたね(笑)。「制限行為能力者」(せいげんこういのうりょくしゃ)。
(詳しくは、民法上問題となる能力:③行為能力へGo!スクロール必須)
♣プラスα知識♣
この言葉の説明をする前に、まずは民法について、さらっと確認していきましょう。
私たちが生きている社会は、市民社会です。市民とは、政治参加の主体となる自立した個人のことで、私たち一人ひとりが市民です。
そしてこのような市民たちで成り立っている市民社会においては、人が権利を取得し義務を負うのは、自らの意思でそれを望んだときだけであるとされています。つまり、私たちは自らの意思に基づいているときにのみ義務を負うということです。このことを、「私的自治の原則」といいます。
民法は、私的自治を重要な原則とする、市民相互の生活上の法律関係(例:契約)を定めた法律なのです。
民法が対象としている「人」とは、権利能力を有する者をいい、自然人と法人があります。
…この点が、私たちの日常の認識と法律が異なる部分ですよね。日常の認識ですと、人=生きている個人、というのが一般的な見解ですが、法律上だと、人には自然人(しぜんじん。生きている人間)以外に法人(会社など)も含まれることになるんです。というか、「権利能力を有する者」が「人」であるということになるんですよね…
では、権利能力とはなにか。行為能力とどう違うのか。そのことを以下で説明していきますが、今日皆さんによくよく覚えていただきたいのは、「行為能力」なので、たくさん「○○能力」と出てきますが、あまり気にせず気軽に読み流していってくださいね👌
民法上問題となる能力: ①権利能力
権利能力とは、権利義務の主体となる能力(資格)のことをいいます。
→私たちは自然人ですから、生まれた時点から当然この能力を有しています。およそ、今現在生きている(日本)人には全員この権利能力がありますね。
民法上問題となる能力:②意思能力
意思能力とは、自己の行為の結果を理解するに足りる精神的な能力のことをいいます。
→ある法律行為、たとえば飲み物を買うなどの売買行為をすることの意味を理解できるかどうかに関する能力のことをいいます。知能が発達していない幼児や、判断能力が著しく衰えてしまった高齢者の方などには、この能力が無いことになります。7~10歳程度の能力とされていますので、今これを読んで理解できている皆さんには、当然意思能力があることになりますね。
民法上問題となる能力:③行為能力
行為能力とは、単独で確定的に有効な意思表示をなし得る能力のことをいいます。
→たった一人で法律行為をすることができる能力のことです。確定的とは、あとで取り消すことなく、といった意味合いです。
法律行為とは、それを行うことによって法的に行使できる権利や義務を発生させたり消滅させたりする行為のことをいい、その際に意思表示が不可欠な要素となります。
非常にわかりやすく言えば、民法という法律に規定されている行為、ですね。(さらに言えば、私たちが普段行う、売買だったりアルバイト等の労働だったり物を貸したり借りたりする行為は「契約」といって、実は民法に詳細に規定されているんです。…私たちがその事実を知らないだけであって。)
法的に行使できるとは、たとえば、あなたが「肉まんが食べたいな~」と思ってコンビニに行きました。そして、レジの人に対し「肉まんを一つください」と言いました(←これが意思表示です)。レジの人は肉まんを渡し、あなたは代金を支払いました。しかし、袋をあけてみると、なんと、入っていたのは肉まんではなくあんまんだったのです。このような場合、あなたはレジの人に対して、商品の代金を返してもらうか、あるいは、商品を肉まんに換えてくれるよう求めることができます。どうしてそのようなことができるかというと、法律上でその権利が認められているからなのです。このことを、法的に行使できるといいます。
さて、ようやく本題に入ることにします。
③の行為能力は、未成年者だと制限されるのですが、そのことを制限行為能力といい、未成年者を「制限行為能力者」といいます。…(※)
ではなぜ、民法は「制限行為能力者」というカテゴリーを設けたのでしょうか。
③でも説明しましたが、行為能力とは単独で法律行為をすることができる能力のことなので、行為能力がある人(=成人)には、法律行為をすることについて、相応の知識のあることが前提となるわけです。さらに言えば、民法にかかわらず、経済においても、行為をおこなう主体は合理的で理性的な人間であるということを前提に、法律などの制度を設計しているのです。
ただ、それだとどうしても、物事を判断する知識や知恵が十分でない者が不利益を被ってしまう場合がでてきます。
つまり、未成年者は生きてきた年数が他の大人と比較して少ないですから、それに起因する経験不足・知識不足につけこんだ、未成年者である者にとって不利になるような不当な契約の効力がそのまま認められてしまうとなれば、その者が不利益を被ることになり、公平ではありません(そして実際に内容をよく理解しないまま安易に契約を結んでしまう者を狙い撃ちにする悪質な業者もいます)。したがって、そのような事態を避けるために、その者が単独でした法律行為を取り消すことができるものとして、「制限行為能力者」というカテゴリーをつくり、利益を保護しようとしたのです。
(※)制限行為能力者の類型は、未成年者のほかに「成年被後見人」、「被保佐人」、「被補助人」があります。
まとめ
18歳、つまり成年になると大きく変わることは、完全な行為能力を有するようになるということです。その結果、未成年のうちは「制限行為能力者」として、法律行為を取り消すことができるなど、民法上保護されていたものの、成年になったらその法律行為は確定的となるので、よほどのこと(例:詐欺)がない限り、取り消すことができなくなります。
このことをしっかり肝に銘じて、経済活動をしていきましょう!
高校を卒業すれば社会と接する機会が増えると同時に、いろいろと契約を結ぶ機会も増えます。今までは、20歳になるまでは法律で保護されていましたが、近い将来からは、卒業すれば本当に成人(大人)社会の仲間入りを果たすことになります。そのときに正しく判断し行動していけるよう、今からこの知識を知っておいて損はないでしょう👍
以下、
♣プラスα知識♣
☆未成年者の法律行為
それでは、未成年の者が契約をはじめとする法律行為をするにはどんなルールがあるのか見ていきましょう。
①法定代理人(例:親)の同意が必要
②未成年者・法定代理人は、法定代理人の同意を得ない未成年者の法律行為は取り消せる(民法5条2項、120条1項)
以下、順番に説明していきます。
〈①〉
→民法5条1項に規定されています。(条文はおまけ欄に載せておきますので、よかったら見てみてください)
未成年者は制限行為能力者なので、単独で法律行為ができません。もし単独でするとしたら、事前の同意が必要となります。
そして、同意のある行為は取り消すことができません。
ただし、以下の行為は同意は不要となっています。
・お年玉をもらうなどの行為(法律上だと「単に権利を得、又は義務を免れるべき行為」といいます)は、未成年者の利益を害することがないので、同意は不要です。(民法5条1項ただし書)
→お正月に親戚の人からお年玉をもらうときって、わざわざ親の同意を必要としませんよね。
・もらったお小遣いを使う行為(民法5条3項)
→たとえば、お小遣いで文房具を買うなど。法定代理人がお小遣いを渡すということから、未成年者がそのお金でものを買ったりすることを同意していると認められるからです。
・法定代理人から一種又は数種の営業を許された未成年者が、その営業に関してした法律行為(民法6条1項)
→たとえば、親が自分の子どもに、八百屋さんの営業を許可した場合などです。何か物を売ることについて、いちいち親の同意を得ていては不便ですし、お客さんとしても面倒となるからです。
・取消の意思表示(民法120条1項)
→たとえば、高額の健康食品を購入する契約を、親の同意なく結んだとしましょう。その契約を取り消したいと思ったら、未成年者は取り消すことについて親の同意を得なくても取り消す意思表示ができる、ということです。
・認知(780条)や遺言(961条)、氏の変更(791条3項)
→認知とは、婚姻関係にない(結婚していない)男女の間に子どもが誕生したときに、どちらか一方が、「自分の子どもです」と認めることです。これによって、法律上の親子関係が認められることになります。このあたりは、遺言以外、未成年者による結婚に関連することですね。たとえ未成年であっても、結婚すれば成年として扱われることになりますので、同意が必要ないのです(753条)。
↑これらの行為は、取り消すことができません。もし未成年者の法律行為が常に取り消せるとなると、未成年者との契約は不安定なものになるので、相手が契約を結ぶのを躊躇するようになります。すると未成年者にとって経済活動がしにくくなる等不都合な状態になってしまうからです。
・また、未成年者が詐術(「未成年じゃないんです、成人なんですよ」と偽ること)を用いて法律行為をした場合も、取り消すことができません(21条)。
〈②〉
→これが、未成年者と成年者の大きな違いですね(繰り返し言います)。未成年者だったら、何か不利益を被るような契約をしてしまったときは、「実は親の同意がなかったので…」と言って取り消すことができるのです。取り消すと、その契約は最初から無かったことになります(121条)。
一方成年者は、一定の条件が認められないと取り消すことができません。(もし取消が認められなくて、それでもその契約をやめにしたいとなれば、契約解除となり、それはそれでタダじゃ済まされないのです…)
取り消すことができるということは、裏返して言えば、取り消さないこともできるのです。そのことを追認といい、追認した場合、法律行為は確定的に有効となります(=二度と取り消せない)。
【おまけ】民法の条文を載せていきます!
5条1項
「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」
2項 「前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。」
3項 「第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。」
「一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。」
2項 「前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。」
21条
「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。」
120条1項
「行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。」
121条
「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。」
753条
「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。」
780条
「認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。」
791条1項
「子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。」
2項 「父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。」
3項 「子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。」
961条
「十五歳に達した者は、遺言をすることができる。」
良い一日を! Schönen Tag noch!