カテゴリー: 憲法法学

国民主権の内容を3つ、言えますか?

皆さん、こんにちは!
今日は、国民主権について確認していきましょう。

日本国憲法の前文には、「主権が国民に存する」と書いてありますが、ここから、日本は主権在民(国民主権)であるということがわかります。

では、そもそも「主権」ってなんでしょうか?これを5秒以内に即答できた方は、今回の記事を読まなくていいです(笑) 代わりに、数学の記事でも読んでいってください。

主権という概念は、3つの意味で使われます。
①統治権
②国家権力の属性としての、最高独立性
③国政についての、最高決定権

以下、順を追って説明していきますね。なお、政治と関係するのは、③の意味での主権なので、今回皆さんはこれだけしっかり覚えていってください!

主権の意味:①統治権

統治権とはその言葉の示す通り、統治する権利のことですが、統治を「支配」と言い換えることができます。何を支配するのかというと、国民と国土ということですね。
統治権=国権=立法権・行政権・司法権です。
→主権の意味:②最高独立性へGo!

♣プラスα知識♣
中世では、君主(王様)が統治権をもっていました。そのため、たびたび君主による勝手気ままな政策がなされたり裁定が下されたりして、国民が不利益をうけるという事態が起こってしまいました。

したがって、こうした君主による「人の支配」を排斥し、権力を法で拘束することによって、国民の権利や自由を守ろうという「法の支配」を目指す思想が生まれました。
→国が存在する以上、それを統治しなければいけませんから、どうしても国家権力なるものが存在するのですが、それを行使する主体をあらかじめ、王様を超越した存在である、ルール=憲法で定めましょう、ということです。これが、立憲主義です。…(※)

また、国家権力はとても強い力です。なので、ただ一つの国家機関に集中すると権力が濫用され、国民の権利・自由が侵害されるおそれがあります。
したがって、国家権力の作用を性質(立法・行政・司法)に応じて区別し、それを異なる機関に担当させるよう分離し、相互に抑制・均衡(バランス)を保たせるという権力分立(三権分立)の原理が憲法で採られています。

(※)立憲主義は、「権力行使に憲法で歯止めをかけるという考え方」のことをいいますが、上記のとおり、もともとは国王の横暴に歯止めをかけるために生まれました。しかしながら、その意味合いは時代によって変わってきています。
民主主義社会においては、多数派=強者による民意を反映した権力行使にも、少数派=弱者の権利・自由を守るために歯止めをかける、という意味合いに変遷してきました。

主権の意味:②最高独立性

主権の第二の意味が、国家権力の属性としての、最高独立性です。
非常に分かりにくい説明ですね(笑)。言い換えると、「国家の統治権の最高独立性」という意味になります。

国家権力(=国権)とは、国民を統治し支配する国の権力のことを言うので、「国家権力の属性」=「統治権」となるわけです。

最高独立性とは、対内的には最高であり、対外的には独立しているということを意味します。以下、この意味の主権が誕生した経緯を説明しますね。
主権の意味:③最高決定権へGo!

♣プラスα知識♣
まず、これが本来の意味の主権概念、皆がパッと思い浮かぶ主権の意味です。

この意味の主権は、中世においては様々な権力に分散していました。国王、ローマ教皇、諸侯や各自治都市は、それぞれがその土地の支配者として、他の権力主体である支配者から干渉を受けることなく独自に意思決定を行っていました(封建国家)。
ところが、近世における、王権(国王の権力)への権力集中過程で、絶対主義(君主が絶対的権力をもって支配する、専制的な政治形態のこと)が成立しました。
→特にフランスでは、フランスの王権は対外(国外)的にはローマ教皇から独立し、対内(国内)的には封建諸侯よりも最高の権力があるとする、「主権」概念が登場しました。

この主権の概念が、絶対王政後に起こった市民革命においても引き継がれ、近代国家における、唯一最高で独立の国家権力、という意味の主権になったということです。

主権の意味:③最高決定権

主権の第三の意味が、私たちにとって最も身近で重要な概念である、「国政についての最高決定権」です。
この「最高決定権」とは、国の政治のあり方を最終的に決定する力又は権威のことをいいます。
この意味の国民主権の対義語が、君主主権となります。君主主権とは、君主に国の政治について最終的に決定する力があるということです。一方国民主権とは、国民に政治のあり方を最終的に決定する力があるということです。
この意味の主権は、最後までしっかり理解してください!

国民主権の原則は、

①統治権が主権者である国民自身か、あるいは、国民が選挙を通じて直接・間接に組織する機関(例:議員)によって行使されるべき、ということ
→国民主権の権力的契機

②統治権を行使する機関は、つねにその行使について国民に責任を負うこと
(=統治権を行使する機関は、国民に対して、つねに、その行使の正当性を説明し理由づける責務を負う)
→国民主権の正当性の契機

という二つの事柄がその内容となっています。
先に結論を言っておくと、
(私たちにとって重要な概念である、政治の行く末を決定する力があるという意味での)「国民主権には2つの重要な本質があるよ!」ということです。

いや~、もうここに至るまでに色々な言葉が出てきて、オレンジの用語なんて覚えきれない!飽きた!と思われることでしょう(笑)。別に覚える必要はなくて、ただその言葉の示す意味を知っておいてくれればそれでかまいません👍

☆ここでいう「契機」とは、必要不可欠な要素、「本質」という意味合いですね。

権力的契機本質)とは、簡単に言えば、「政治を動かす力は国民にあるよ」ということです。まさに、↑国民主権(下線部)と同じことを指しています。
正当性の契機本質)とは、国家権力の正当性の究極の根拠が国民にある、ということです。
(正当性…社会通念上または法律上、正しく道理にかなっていること)
例えばですが、「国がつくった法律はなぜ正しいの?」という質問に対し、「それは主権者である国民の代表がつくったからだよ」(「そしてその国民の代表は、法律を作るときは必ず国民に理由を説明し、国民の理解・納得を得ているんだ。だから、正当なんですよ」)と答える。このようなやり取りをこの用語から想像できればバッチリです!

まとめ

以上が、私たちが当たり前に口にしている「国民主権」という言葉の、主権の3つの意味を説明したものです。
主権=①統治権、②国家権力の属性としての最高独立性、③国政についての最高決定権。
とくに、③の意味をよく覚えておいてください。そして、主権の意味とあわせて、国民主権の本質(原則)を頭で思い浮かべられるようにしておきましょう!

おまけ

主権の3つの概念は、日本国憲法の随所にしっかりと表れています。

①統治権=「国権」
e.g.)日本国憲法9条「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」
41条「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」
ポツダム宣言8項「日本国ノ主権ハ,本州,北海道,九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」
②最高独立性
e.g.)日本国憲法前文3項「…自国の主権を維持し…」
③最高決定権
e.g.)前文1項「…ここに主権が国民に存することを宣言し、…」
1条「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」

良い一日を!  Shönen Tag noch!

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作成者:

モモンガ日記編集者。 担当は、法律、政治、経済、その他

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